GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「いや、ちょっと聞きたいことがあるんだ。お前の話だと、堤で何か変なのを見たそうだな。何を見たんだ?」
「何だかよくわかりませんでした。相手が武士だったからよかったですが、私みたいな臆病者が相手だったら、目がくらんでたかもしれません」
「河童だって?そうなのか?」
「武士の方が河童だって言ってたんです。そのときの様子はこうです。私が業平の方から戻って、水戸様前からもう少しこっちに来ると、堤の上は薄暗くなっていました。少し前に武士の方が歩いていて、そのまた少し先に14、5歳くらいの小僧が菅笠をかぶって歩いていました」
「その小僧は着物を着ていたのか?」
「暗くてよくわかりませんでしたが、黒っぽい単衣を着ていたようです。雨上がりの悪い道を着物の裾を引きずって、裸足でびしょびしょ歩いているので、後ろから行く武士が声をかけて……武士は少し酔っていたようでした……おい、小僧。なんでそんなだらしない恰好をしているんだ。着物の裾をぐっとまくれ、と後ろから声をかけましたが、小僧は聞こえなかったのか、黙ってびしょびしょ歩いていました。武士は少しイライラしてきたみたいで、三歩くらい近づいて、おい小僧、こう歩くんだと着物の裾をまくってあげたんです。すると……。小僧のお尻の両側に銀色の目玉が二つ光って……。私はびっくりして立ち尽くしていると、武士はその小僧の襟首を掴んで堤の下に投げ捨てました。そして、ははあ、河童だと笑いながら帰って行きました。私は急に怖くなって、急いで家に逃げ帰りました」
「それで、その化け物はどっちの堤の下に投げ込まれたんだ?」
「川の方です」
「なるほど不思議なこともあるもんだな」
「親分。その化け物って河童ですよね?」
「違うない。あれは絶対河童だ」
原文 (会話文抽出)
「御用でございますか」
「いや、ほかじゃあねえが、おまえさんはたった今、堤で何か変なものを見たそうだね。なんですえ」
「なんでございましょうか。わたくしもぞっとしました。相手がお武家ですから好うござんしたが、わたくし共のような臆病な者でしたら、すぐに眼を眩してしまったかも知れません」
「河童だというが、そうですかえ」
「お武家は河童だろうと仰しゃいました。まあ、こうでございます。わたくしが業平の方までまいりまして、その帰りに水戸様前からもう少しこっちへまいりますと、堤の上は薄暗くなって居りました。わたくしの少し先を一人のお武家さんが歩いておいででございまして、その又すこし先に、十四五ぐらいかと思うような小僧が菅笠をかぶって歩いて居りました」
「その小僧は着物をきていましたかえ」
「暗いのでよく判りませんでしたが、黒っぽいような単衣を着ていたようです。それが雨あがりの路悪の上に着物の裳を引き摺って、跣足でびちょびちょ歩いているので、あとから行くお武家さんが声をかけて……お武家さんは少し酔っていらっしゃるようでした……おい、おい、小僧。なぜそんなだらしのない装をしているんだ。着物の裳をぐいとまくって、威勢よく歩けと、うしろから声をかけましたが、小僧には聞えなかったのか、やはり黙ってびちょびちょ歩いているので、お武家はちっと焦れったくなったと見えまして、三足ばかりつかつかと寄って、おい小僧、こうして歩くんだと云いながら、着物の裳をまくってやりますと……。その小僧のお尻の両方に銀のような二つの眼玉がぴかりと……。わたくしはぎょっとして立ちすくみますと、お武家はすぐにその小僧の襟首を引っ掴んで堤下へほうり出してしまいました。そうして、ははあ、河童だと笑いながらすたすたと行っておしまいなさいました。わたくしは急に怖くなって、急いで家へ逃げて帰ってまいりました」
「そうして、その化け物はどっちの堤下へ投げられたんですえ」
「川寄りの方でございます」
「なるほど不思議なことがあるもんですね」
「親分。そのお化けというのは河童ですね」
「ちげえねえ。たしかに河童だ」