GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「お約束……。なんでしたっけ?」
「そら、向島で河童と蛇の捕物の話。あれをきょうぜひ伺いたいんです」
「河童……。ああ、なるほど。あなたは本当に覚えがいいですね。あれはもう去年のことでしょう。しかも去年の桜の時期――とんでもない噂の名人ですね。なにしろ、そこまでしつこく覚えてられたら、とてもかないません。そうとなれば、はい、はい、申し上げます、申し上げます。こうなると、むしろあなたの方が十手を持っているようですね。はははははは。いや、冗談はさておき話しましょう。ご存じの通り、両国の川開きは毎年5月の28日と決まっていましたが、慶応元年の5月には花火の催しはありませんでした。つまり世の中が騒がしくなったせいで、もうその頃から江戸も終わりに近づいていました」
「その28日の午後でした。いつもの年なら私も子分たちを連れて、両国界隈をパトロールしなければならないんですが、今年は川開きも中止になったというので、まあ楽ができると思って神田の家に寝ころんでいましたら、1人の若い女が駆け込んで来たんです」
原文 (会話文抽出)
「いつか向島でお約束をしたことがありましたっけね」
「お約束……。なんでしたっけ」
「そら、向島で河童と蛇の捕物の話。あれをきょう是非うかがいたいんです」
「河童……。ああ、なるほど。あなたはどうも覚えがいい。あれはもう去年のことでしたろう。しかも去年の桜どき――とんだ保名の物狂いですね。なにしろ、そう強情におぼえていられちゃあ、とてもかなわない。こうなれば、はい、はい、申し上げます、申し上げます。これじゃあどうも、あなたの方が十手を持っているようですね。はははははは。いや、冗談はおいて話しましょう。御承知の通り、両国の川開きは毎年五月の二十八日ときまっていたんですが、慶応の元年の五月には花火の催しがありませんでした。つまり世の中がそうぞうしくなったせいで、もうその頃から江戸も末になりましたよ」
「その二十八日の午過ぎでした。いつもの年ならわたくしも子分どもを連れて、両国界隈を見廻らなければならないんですが、今年は川開きも見あわせになったというので、まあ楽ができると思って神田の家に寝ころんでいますと、一人の若い女が駈け込んで来たんです」