GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「20歳です」
「鍋久には何年奉公している?」
「3年です」
「新次郎とできていたんだな。そうだろ、正直に言え」
「恐れ入りました」
「今夜は小左衛門の家に何をしに行ったんだ?」
「若いおかみさんがいるかいないかを聞きに行ったんです」
「生きていたらどうするんだ?」
「お上に訴えます」
「若いおかみさんが来てから、新どんはどうもそわそわしていて、私を相手にしません。何を話しかけてもろくに返事もしてくれません。新どんは若いおかみさんに惚れているんです。それは私がよく知っています。おかみさんは身を投げて死んだことになっていますが、新どんはどうも生きているように思われるんですって、内緒で私に言いました。新どんはきっと何か知っているに違いありません」
「お前はどうして鍋久から暇を出されたんだ?」
「やっぱりそのことなんです。若いおかみさんは生きているかもしれないって、私がうっかり口を滑らせたのが、おかみさんや番頭さんの耳に入って、とんでもないことを言う奴だって、さんざん叱られました。それがきっかけで、ついに暇が出たんです」
「新次郎。お前は今夜どうして出てきた?」
「昼間に小僧を使によこしましたが、それがいつまでも帰ってこないので、なんだか不安になって……」
「小僧に持たせてよこした手紙には、どんなことが書いてあるんだ?」
「どうしても、若いおかみさんはどこかで生きているように思われてなりませんで……」
「どこかに隠れているなら、ぜひ一度会わせてくれって……」
「会ってどうするつもりだ?」
「申し上げます。新どんは若いおかみさんと一緒に駆け落ちでもするつもりでしょう。それで私を殺そうとしたんです」
「私が何でお前を……」
「手で首を絞めたのはお前じゃなくても、あの浪人と組んで、私を殺そうとした。そうだ、そうだ、それ以外は考えられない。私をごまかして追い返そうとしても、私がどうしても動かないので、浪人が両手で私の首を絞めようとした……。その時お前は私を助けようともしないで、平気で見てたじゃないか」
「いや、助ける暇がなかったんだ」
「いいえ、嘘です、嘘です」
「嘘じゃない」
「あれこれ人を騙しておいて、邪魔になったら殺そうとする……。お前は鬼のような人間だ」
「騒ぐな。落ち着け」
「いつまでも言い争っててもしょうがない。俺の方にも目があるから、白か黒かはちゃんと睨んでるんだ」
原文 (会話文抽出)
「お直。おまえは幾つだ」
「二十歳でございます」
「鍋久には何年奉公している」
「三年でございます」
「新次郎と出来合っているのだな。そうだろう、正直に云え」
「恐れ入りました」
「今夜は小左衛門の家へ何しに行ったのだ」
「若いおかみさんが居るか居ないか、訊きに行ったのでございます」
「生きていたらどうするのだ」
「お上へ訴えてやります」
「若いおかみさんが来てから、新どんは何んだかそわそわしていて、わたくしを見向きもしません。何を話しかけても碌々に返事もしません。新どんは若いおかみさんに惚れているのでございます。それはわたくしがよく知っています。おかみさんは身を投げて死んだということになっているのに、新どんはどうも生きているように思われると、内証でわたくしに云いました。新どんはきっと何か知っているに相違ありません」
「おまえはどうして鍋久から暇を出されたのだ」
「やっぱりその事からでございます。若いおかみさんは生きているかも知れないと、わたくしがふいと口をすべらせたのが、おかみさんや番頭さんの耳にはいって、飛んでもないことを云う奴だと、さんざん叱られました。それがもとで、とうとうお暇が出たのでございます」
「新次郎。おまえは今夜どうして出て来た」
「昼間のうちに小僧を使によこしましたが、それがいつまでも帰って参りませんので、なんだか不安心になりまして……」
「小僧に持たせてよこした手紙には、どんなことが書いてあるのだ」
「どう考えましても、若いおかみさんは何処かに生きているように思われてなりませんので……」
「どっかに隠れているならば、ぜひ一度逢わせてくれと……」
「逢ってどうする積りだ」
「申し上げます。新どんは若いおかみさんと一緒に駈け落ちでもする積りに相違ございません。それでわたくしを殺そうとしたのでございます」
「わたしが何んでお前を……」
「手をおろしたのはお前でなくっても、あの浪人とぐるになって、わたしを殺そうとした。そうだ、そうだ、それに相違ない。わたしを誤魔化して追い返そうとしても、わたしがどうしても動かないので、浪人が両手でわたしの咽喉を絞めようとした……。その時お前さんはわたしを助けようともしないで、平気で眺めていたじゃあないか」
「いや、助ける間がなかったのだ」
「いいえ、嘘だ、嘘だ」
「嘘じゃあない」
「さんざん人を欺して置いて、邪魔になったら殺そうとする……。おまえは鬼のような人だ」
「そうぞうしい。静かにしろ」
「いつまでも噛み合っているにゃあ及ばねえ。おれの方にも眼があるから、白い黒いはちゃんと睨んでいるのだ」