岡本綺堂 『半七捕物帳』 「親分、どうも思うような種はあがりませんよ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「班長、どうもいい情報が見つかりません。女の行者は『お局様』とか『お姫様』とか言われてるだけで、本名は分かりません。50くらいの家来の男は『式部』って呼ばれてるらしくて、どうやら上方出身のようです。15、6の小娘は藤江って言って、これもなかなか美人らしいんですが、行者の本当のお姉さんなのか親戚なのか、そっちはよく分からないみたいですね。台所働きのお由とお庄は飯炊きとか水汲みばっかりさせられてて、中のことは何も知らないみたいです」
「昨日も言ったけど、お祈りを頼む人以外で出入りしてる奴はいないのか?」
「そこが大事だと思って近所の人に聞き込みしたり、お由って女中が外に出るところを捕まえてそれとなく探ってみたりしたんですが、誰も出入りしてる様子がないんです」
「夜にお祈りを頼みに来る奴はどれくらいいるの?」
「ここ1か月くらいは誰も来てないそうです。頼む奴がいないんじゃなくて、行者の方が体調が悪いとかで、夜の祈祷は全部断ってるんだって。でも、その中でたった1人だけ欠かさず来る奴がいるんです」
「紙屋の息子か」
「あ、源次を探し当てましたか。あいつ油断できないですからね」
「そっちの方はだいたい把握されてるんですか?」
「まあ話してみなよ」
「そうでしょ。誰が考えても同じところに落ち着くんですけど、困るのは手下どもですね」
「夜にお祈りを頼みに来るふりをして変装して入り込むつもりだったんでしょうけど、最近はそれも来ないみたいで、困ったもんです。行者どもはいつ捕まえてもいいんですけど、とりあえずしばらくは様子を見て、外から来る奴に気をつけましょう」

原文 (会話文抽出)

「親分、どうも思うような種はあがりませんよ。女の行者はお局様とかお姫様とかいっているだけで、ほんとうの名はわかりません。五十ばかりの家来の男は式部といっているそうで、どうも上方生まれに相違ないようです。十五六の小娘は藤江といって、これもなかなか容貌がいいんですけれど、行者のほんとうの妹か身寄りの者か、そこはよく判らないそうです。台所働きはお由とお庄というんですが、これは飯炊きや水汲みに追い使われているだけで、奥の方のことは何も知らないようです」
「ゆうべも云ったことだが、祈祷をたのむ者のほかに誰も出這入りするらしい様子はねえのか」
「わっしもそこが大切だと思って近所の者によく訊いてみたり、お由という女中が外へ出るところを捉まえて、それとなく探りを入れて見たんですが、まったく誰も出這入りをするらしい様子がないんです」
「夜になって祈祷をたのむ奴が幾人ぐらい来る」
「それがこの一と月ほどは一人も来ねえそうです。頼む奴が来ねえのじゃねえ、行者の方でなにか身体がわるいとかいうので、夜の祈祷はみんな断わっているんだそうです。だが、その中でたった一人かかさずに来る奴があります」
「紙屋の息子か」
「あ、源次の奴ほじくり出しましたかえ。あいつ油断がならねえ」
「じゃあ、その方は大抵御承知ですね」
「だが、まあ話してみろ」
「そうだろう。誰が考えても、落ち着くところは同じことだが、ただ困るのは徒党の奴らだ」
「夜なかに祈祷をたのむ振りをして、姿をかえて入り込むのじゃねえかと思うが、これも此の頃はちっとも来ねえというのじゃあ仕方がねえ。行者の奴らをつかまえるのは何日でも出来る。あいつ等はまあ当分は生簀にして置いて、ほかから来る奴らに気をつけろ」


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