岡本綺堂 『半七捕物帳』 「まあ、こういう訳なんです」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「まあ、こういう訳なんです」
「私も最初は訳がわかりませんでしたが、浅草に行って鶏の事件に出くわしてから、どうも鶏の一件と鬼娘の一件が関係しているらしいと思ったんです。それからいろいろ調べてみて、人間が犬を使ってやってるんだろうと考えました。そしたら庄太に相談すると、吉原の堤下に獣物使いのお紺という女がいて、評判がよくないらしい。それで庄太に調べに行ってもらったら、やっぱりお紺の家には強い犬が二匹飼われてるというんです。するともう、犯人はだいたい目星がついて、割とあっさり片付きました。捕り物としては簡単な方なんですけど、ただそのお紺が犬を連れているのが困りました。そこで、庄太の近所の強い男にお願いして、人間も犬もまとめて片づけてもらったんです。それでその場で殺された犬は運が良かったんですけど、生き残った方はひどい目に遭ってかわいそうでした。これが江戸中に評判になって、お紺は犬神使いだという噂も立ちましたが、実はさっき言ったようなことで、ただやり方が珍しいので、世間を驚かせただけなんです。それでも、その後は誰も似たような真似をしませんでした。今なら死体の傷口を見るだけで、人間が噛んだのか、獣が噛んだのか、すぐわかりますが、昔はそれがよくわからなかったんです。だから探索も大変だったんですよ」

原文 (会話文抽出)

「まあ、こういう訳なんです」
「わたくしも初めは何がなんだか見当が付かなかったんですが、浅草へ出かけての鶏の一件にぶつかってから、どうもその鶏の一件と鬼娘の一件とが何かの糸を引いているらしいと思い付いたんです。それからだんだん調べて行った挙げ句に、なんでも人間が犬を使ってやる仕事だろうと睨んだので、庄太にそれを相談すると、吉原の堤下にお紺という獣物使いで、質のよくない女が住んでいるという。それから庄太を探索にやると、果たしてお紺の家には二匹の強そうな犬が飼ってあるという。もうそれで、種がすっかり挙がってしまって、案外に訳なく片付いたんです。捕物の方からいえば楽なんですが、唯そのお紺が犬を連れているというので少し困りました。そこで、庄太の近所にいる腕っ節の強い男を味方にたのんで、人間も犬も一緒に片付けてしまったんです。それでも其の場でぶち殺された犬は仕合わせで、生き残っていた方は飛んだむごたらしいお仕置をうけて可哀そうでした。これが江戸じゅうの評判になって、お紺は犬神使いだなどという噂もありましたが、種を割ってみれば今云ったようなわけで、唯その遣り口がめずらしいので、ちょっと世間をおどろかしただけのことですよ。でも、まあ、いい塩梅にその後再びそんな真似をする奴も出ませんでした。今日ならば死骸の疵口をあらためただけで、人間が咬んだのか、獣が咬んだのか、そのくらいのことはすぐ鑑定が付くでしょうが、昔はそれがよく判らなかったんですね。それだけに探索の方も余計に骨が折れたんですよ」


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