岡本綺堂 『半七捕物帳』 「いつかは弁天娘のお話をしましたから、きょ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「前に弁天娘の話したから、今日は鬼娘の話でもしようか」
「おはよう」
「やあ、おはよう」
「早いな、珍しい」
「いや、最近はいつも早いんだ」
「そうだろう。朝顔の盛りなんて知らないだろう。でも、朝顔ももうダメだな、この通り蔓が伸びちゃった」
「本当ですね」
「ところで親分。ちょっと耳貸してくれよ。俺の近所で変なことが流行りだしたんだ」
「何の流行だ、はしかか?」
「そんなんじゃなくて……」
「実は隣の家の女の子がお作って言うんだけど、昨日死んじまったんだ」
「どんな子で、いくつくらい?」
「顔は子供みたいだったけど、もう19か20でしょう。わりと大人びてる方だったよ」
「そんで、その子がどうしたの。殺されたの?」
「殺されたのは間違いないんだけど……。それの恐ろしいことに、啖い殺されたんですよ」
「化け猫に?」
「いや、冗談じゃねえ。本当に啖い殺されたんだ」
「本当だよ。だって隣の部屋なんだもん。こればっかりは間違いないよ」

原文 (会話文抽出)

「いつかは弁天娘のお話をしましたから、きょうは鬼むすめのお話をしましょうか」
「お早うございます」
「やあ、お早う」
「たいへん早いな、めずらしいぜ」
「なに、この頃はいつも早いのさ」
「そうでもあるめえ。朝顔の盛りは御存じねえ方だろう。だが、朝顔ももういけねえ、この通り蔓が伸びてしまった」
「そうですねえ」
「時に親分。すこし耳を貸して貰いてえことがあるんですよ。わっしの近所にどうも変なことが流行り出してね」
「なにが流行る、麻疹じゃあるめえ」
「そんなことじゃあねえので……」
「実はわっしの隣りの家のお作という娘がゆうべ死んでね」
「どんな娘で、いくつになる」
「子供のような顔をしていたが、もう十九か二十歳でしょうよ。まあ、ちょいと渋皮の剥けたほうでね」
「そこで、その娘がどうした。殺されたか」
「殺されたには相違ねえんだが……。そいつが啖い殺されたんですよ」
「化け猫にか」
「いや、冗談じゃあねえ。ほんとうに啖い殺されたのか」
「ほんとうですよ。なにしろわっしの隣りですからね。こればかりは間違い無しです」


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