岡本綺堂 『半七捕物帳』 「おまえさん御奇特に毎月この墓へお詣りに来…

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青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「お兄さん、毎月このお墓にお参りしてるんすよね?」
「はい、若い師匠んとこにちょっと稽古に通ってたもんで」
「それで、回りくどいことは言わないで手短に聞くけど、お兄さんと若い師匠は関係あったんすか?」
「いや、正直に言って下さいよ。お兄さんと若い師匠は関係があった。そしたら師匠はあんな惨めな死に方をした。丁度その一周忌に師匠の親父さんもこんなことになっちまった。縁と言えば縁だけど、不思議だとか言ってるだけじゃ済まねえ。若い師匠の仇を取るために、お兄さんが親父さんに何かしたんじゃないかと、世間では噂になってる。それが上の耳にも入ってる」
「とんでもない……。私がそんな……」
「いや、お兄さんがしてないことは知ってます。私は神田の半七って御用聞きです。世間の噂を頼りに、罪のない人をいきなり捕まえるような無慈悲なことはしません。その代わり、全部正直に話してもらわなきゃ困る。いいですか、分かりましたね。それで今回のことですが、お兄さん、若い師匠と本当に関係があったんすか?ウソはダメですよ。このお墓の中には若い師匠がいるんすから。その前でウソをつくのは筋違いでしょ」

原文 (会話文抽出)

「おまえさん御奇特に毎月この墓へお詣りに来なさるそうですね」
「へえ、若い師匠のところへはちっとばかり稽古に行ったもんですから」
「そこで、くどいことは云わねえ、手短かに話を片付けるが、おまえさんは死んだ若い師匠とどうかしていたんだろうね」
「ねえ、正直に云って貰おうじゃねえか。おまえさんが若い師匠とどうかしていた。ところが、師匠はあんな惨めな死に様をした。丁度その一周忌に大師匠が又こんなことになった。因縁といえば不思議な因縁だが、ただ不思議だとばかり云っちゃいられねえ。若い師匠のかたきを取るために、お前さんが大師匠をどうかしたんじゃねえかと、世間で専ら評判をしている。それが上の耳にもはいっている」
「飛んでもねえこと……。わたくしがどうしてそんな……」
「いや、おまえさんがしたんでねえことは私は知っている。わたしは神田の半七という御用聞きだ。世間の評判をあてにして罪科もねえ者を無暗にどうするの斯うするのと、そんな無慈悲なことはしたくねえ。その代りに何もかも正直に云ってくれなけりゃあ困る。いいかい、判ったかね。そこで今の一件だが、お前さん、まったく若い師匠とどうかしていたんだろうね。え、嘘をいっちゃあいけねえ。この墓の中には若い師匠がはいっているんだぜ。その前で嘘をつかれた義理じゃああるめえ」


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