岡本綺堂 『半七捕物帳』 「夜ふけに伺いまして、だしぬけにこんなこと…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「夜中にすみません。いきなりこんなこと言うのも変なんですけど、この近くに住んでて、昨晩変な夢見たんで……」
「へー」
「男の人が……紫色の着物を着てて、冠かぶったいい感じの人だったんですけど。その人が僕の枕元にきて、『自分の命が明日終わっちゃうから、助けてください』って言うんですよ。それで、『あなたはどなたですか』って聞くと、『無量寺門前の草履屋、藤吉の家におります。そこに行けばわかります』って言ったと思ったら、夢が覚めちゃったんです。夢だったんで、そのままにしておいたんですけど、夜になって考えてたら、なんか気になってきちゃって。それで、思い切ってこんな時間にお邪魔したんです……」
「それも夢だけの話なら、僕もあんま気にしないですけど、今朝起きてみたら、枕元に魚の鱗みたいのが1枚落ちてて……。それも紫がかった金色に光ってて」
「あ、奥でなんかバタバタしてるな……」
「さっきの話ですけど、何か思い当たることありませんか」
「別に……」
「マジで何も?」

原文 (会話文抽出)

「夜ふけに伺いまして、だしぬけにこんなことを申し上げるのも異なものでございますが、わたくしはこの御近所に居りますもので、昨晩不思議な夢を見ましたのでございます」
「はあ」
「ひとりの男……むらさきの着物を被て、冠をかぶった上品な人でございました。それがわたくしの枕もとへ参りまして、自分の命はきょう翌日に迫っている。どうぞあなたの力で救っていただきたいと、こう申すのでございます。そこで、一体あなたは何処のお方ですかと訊きますと、わたくしは無量寺門前の草履屋の藤吉という人の家にいる。そこへお出でになれば自然にわかると、云うかと思うと夢が醒めました。なにぶんにも夢のことでございますから、そのままにして置きましたのですが、夜になって考えますと、なんだか気にもなりますので、とうとう思い切って今時分に伺いましたようなわけでございますが……」
「それも夢だけのことでございましたら、わたくしもそれほどには気にかけないのでございますが、実はけさになってみますと、枕もとに魚の鱗のようなものが一枚落ちていましたので……。それは紫がかった金色に光っているのでございます」
「あ、奥で何か跳ねるような……」
「唯今申し上げたことで、何かお心あたりのようなことはございますまいか」
「別にどうも……」
「まったくお心あたりはないでしょうか」


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