無窮ナレッジ

▼リングをつける指のもつ意味、そして町工場存続論

http://www.howclub.com/index2/shopping/yubinoimi.html 
高校が男子校であった私にとって、大学一回生のとき実験で一緒だった
"貴重な"女学生が指輪をはめていたことは驚きでありました (その君に言いたい
のは、実験中に携帯するな、ということ)。
 
"貴重な"というのは、私は工学部生ですから、工学部機械・材料・エネルギー
・原子力・航空系における男女比率は、ご存知でしょう (学科で、男:女
 = 49:1 ぐらいか)。
 
日本の町工場がバタバタたおれて、ものづくりが危機だとききますが、これには
工科系の女子比率の低さが大きく影響しています。
 
終戦直後、ベンチャーとして町工場をはじめた人、例をあげると
 
 井深大が東京通信工業(現、ソニー) を設立したのが1946年、当時井深は38歳ぐらい
 
 本田宗一郎が本田技研を設立したのが1948年、当時本田は42歳ぐらい
 
です。このような町工場がたくさんあるように思います。「東京通信工業
株式会社設立趣意書」* のような高い理想を掲げ、創められた町工場も多い
ことでしょう。
 
 * http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/prospectus.html 
 
両社はのちに世界的大企業になりますが、もちろん、それはごくひと握り
のこと、たいていは小規模の町工場のままです。そして、55年の後の現在、
どうなるかというと、設立者、小規模な企業ではイコール社長となりますが、
もう95歳です。たいていは死亡、すくなくとも既に引退しています。
 
さて、後継者は誰にしたのでしょう。小規模な企業では、どうしても「世襲」と
なりますが、そのためには、次の条件をすべてみたす子供がいなければならない:
 
 1. 町工場の社長をやる意思をもっている (ときに現在の安定した地位を捨てて)
 
 2. 工学系の知識をもっている
 
 3. 賢い、社長としての資質がある
 
「鎖はもっとも弱い輪よりも弱い」** 、すべての条件をみたすのは大変です。
それに加え、問題になるのが、条件2 と 工科系の女子比率の低さです。
 
生まれる子供の比率が 男:女 =1:1 なのに、工科系の女子比率はほぼゼロ。つまり
工科系の女子比率の低さが、町工場の後継者を半減させ、後継者がいないことによる
町工場の倒産件数を倍増させているわけです。
 
 ** 鎖は、構成する全ての輪が「壊れていない」条件を満たすとき、
  「壊れていない」ことになります。10個の輪からなる鎖を仮定して考えます。
  輪のうち、ひとつは10回引っ張ると壊れるとし、他の9個の輪は100回引っ張る
  と壊れるとします。
 
  すると、この鎖は何回引っ張ると壊れるでしょうか。
 
  (鎖が壊れない確率)= (第1の輪が壊れない確率)×(第2の輪が壊れない確率)
             ×……×(第10の輪が壊れない確率)
           = [ 1- (1/10) ]×[ 1 - (1/100) ]×……×[ 1 - (1/100) ]
           = 0.822
 
  (鎖が壊れる確率)  = 1 - (鎖が壊れない確率) = 1- 0.822 =0.178
 
  (鎖が壊れるまでに引っ張れる回数)
           = 1÷(鎖が壊れる確率) = 1÷0.178 = 5.62 回
 
  というわけで、この鎖は 5.62 回 引っ張ると壊れることになり、10回引っ張ると
  壊れる「もっとも弱い輪よりも弱い」ことになります。