夕食で、鯛のあら炊きを食べた。いつもは頭が左右真っ二つに割ってあるの だが、今日はそのままだった。 マグロのかぶと焼きみたいに、皿の上に、さらし首にした。むんずとした口と、 歯が印象的である。
だいたいほじくり、鳥葬の鳥みたく身を食べ、あらかた骨だけにした後、口を あけた。 大きな舌が見える。煮られて真っ白だ。 鯛の口腔を、人の口が食べるのだ。これまでになく残酷な気分がした。舌の 温度が下がったような気がする。 しかし、我のために犠牲になった生命に感謝。ありがたく口腔の薄い肉を いただいた。