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▼分子結晶の溶解

溶解する分子結晶 * は、二種類に分けられる。ひとつは、分子のまま溶けるもの **、
もうひとつは、分子がバラバラになりイオンとなった状態でとけるものである。
 
 *  分子結晶。分子がさらに分子間力や水素結合で規則正しく結合したもの。
   非金属元素のみで構成される。
 ** 溶解の定義「溶質がとなり...」と整合しない表現となっているが、これは、
   後者の「分子がバラバラになりイオンとなった状態でとけるもの」との対比
   するために「分子のまま溶けるもの」としたものである。分子結晶は多くの
   分子がさらに結合したものであり、分子結晶から分子ひとつひとつになった
   ことで、すでにバラバラになっている。
 
イオンとなって溶ける分子は、その帯びている正負の電荷が、分子のまま溶ける分子
よりも大きい。このため、より大きな力で水分子に引きつけられ、バラバラにされて
イオンとなる。
 
ある水に溶ける分子結晶が、二種類のどちらに所属するかを見分けるには、基本的に
水溶液の pH (水素イオン濃度)が分かればよい。
 
 ・ 水溶液が中性であるものは、分子のまま溶けるもの
 ・ 水溶液が酸性・塩基性(アルカリ性)であるものは、分子がバラバラになり
   イオンとなった状態でとけるもの
 
である。
 
水に分子のまま溶けるものとしては、例えば、蔗糖(:ショトウ。いわゆる砂糖。
溶けると砂糖水)やエタノール(酒)がある。蔗糖・エタノールともに水酸基(-OH)を
持ち ***、水酸基の酸素原子(負)と水の水素原子(正)、水酸基の水素原子(正)と水の
酸素原子(負)が引き付けあう ****。
 
 ***  蔗糖(C12H22O11)は 8個、エタノール(CH3CH2OH)は 1個の水酸基(-OH)を持つ。
 
 **** 水素結合という。
 
一方、水にイオンとなって溶ける分子としては、例えば、酢酸(溶けるとお酢)、
塩化水素(溶けると塩酸)、アンモニア(溶けると少し違うがキンカン)がある。
 
酢酸(CH3COOH)は、水素イオン(H+)と酢酸イオン(CH3COO-)として、
塩化水素(HCl)は、水素イオン(H+)と塩化物イオン(Cl-)として、
アンモニア(NH3)は、アンモニウムイオン(NH4+)と水酸化物イオン(OH-)として、水に溶ける。
各物質ともに前に陽イオンを、後に陰イオンを書いたが、陽イオンは水の酸素原子(負)と、
陰イオンは水の水素原子(正)と引き付けあう。
 
なお、溶質となるのは、分子結晶以外にもイオン結晶 ***** がある。
 
 ***** イオン結晶。陽イオンと陰イオンが規則正しく結合したもの。たいてい金属元素
    と非金属元素から構成される(アンモニウム塩などが例外)。イオン結晶には、
    分子結晶にとっての分子のような下位単位は存在しない。つまり、食塩(NaCl)の
    場合、ナトリウムイオン(Na+)一個と塩化物イオン(Cl-)一個からなるNaCl一個と
    いうのは普通存在しない。
 
水に溶けるイオン結晶は、すべて、バラバラになりイオンとなった状態で水に溶ける。
例えば、食塩(NaCl)は、ナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl-)として、水に溶ける。
 
水にイオンとなって溶ける分子結晶とイオン結晶のことを電解質という。
分子結晶のうち、水に分子のまま溶けるものを非電解質という。