無窮ナレッジ

▼地球流体基礎実験集「実験室の中の空と海」

http://www.gfd-dennou.org/library/gfd_exp/index.htm 
大きな画像の「日本語」をクリックしてお入りください。
 
地球の自転のため、地球規模の大気・海洋にはコリオリ力が働き、一見不思議な挙動
を示します。この様子を、回転台 (レコードプレーヤーと同じもの) の上で実験を
行うことで再現し、動画におさめて公開しているサイトです。
 
なお、コリオリ力とは、見かけの力です。宇宙空間から地球大気・海洋を見ると
そのような力が働いているようには見えません。自転している地球上で観測する
とコリオリ力が働いているようには見えます。
 
速さV の物体 1kg にかかるコリオリ力の水平成分の大きさ Co は、地球の自転角速度Ωと
緯度φ(北緯:正, 南緯:負)を用いて、
 
 Co = 2ΩV sin φ
 
と表されます。そして、コリオリパラメータ f を f ≡ 2Ω sin φ と定義すると、
 
 Co = fV
 
となります。
 
一方、地球上の大気・海洋はなにかしら回転しています。回転している物体 1kg に
かかる遠心力 Ce は、回転半径 r を用いて、
 
 Ce = (V^2) / r
 
と表されます。
 
よって、Ce / Co = V / (fr) となります。Ce / Co は、ロスビー数(Rossby数) * Ro と
呼ばれます。
 
 * Carl Gustaf Rossby 。1898年12月28日 ノルウェー生まれ。
 
  なお、はじめてコンピュータによる24時間気象予報に成功したフォン=ノイマンも
  12月28日生まれ(1903年, ハンガリー)。
  http://mkynet.hp.infoseek.co.jp/webcic/lib/inw2/inw_0309200.html#1 
−移転→  http://takagi1.net/g-sys/inw2/1_inw_0309200.html 
−移転→  https://takagi1.net/webcic/lib/inw2/inw_0309200.html#1 
台風が北半球で(地表面で ** )左回り、南半球で右回りであるのはこのためです。
 
 ** 実は、高層において、台風から周りに向かって風がふきだしている(地表では風が
   吸い込まれている)流れは、北半球で右回り、南半球で左回りである。
 
最初に「地球の自転のため、地球規模の大気・海洋にはコリオリ力が働き、一見不思議な
挙動を示します」と書きました。台風の例ではあまり「不思議」ではありませんので、
もう一つ例を示します。
 
空気は気圧の高いところから低いところに向かって流れますので、風は等圧線と垂直に
吹くはずです。しかし、実際は、「赤道近く[( sin φ = 0 )]や水平スケールが100km以下
[ r が小さい]」*** を除いて、風は、気圧の等圧線に沿って流れます。これは、コリオリ力
が働いているためです。このような風を、地衡流(geostrophic current) や
地衡風(geostrophic wind) と呼びます。
 
 *** http://www-ocea.kugi.kyoto-u.ac.jp/sakamoto/ocean.html 
 
一方、Ro が 1 よりも十分大きい場合、コリオリ力は無視してかまいません。これは
たとえば水を貯めた洗面台の栓を抜いたとき( r が小さい)や、赤道近く( sin φ = 0 )で
起こります。このとき起こる渦の向きは、右回り・左回りが確率 50%, 50% です。
 
水を貯めた洗面台の栓を抜いたとき左回りの渦ができるのはコリオリ力によるものだ
という人がよくいますが、これは誤りです。