http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0401/30/news057.html http://d.hatena.ne.jp/hakuriku/20040202 http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt74/20040130AS1G3001K30012004.html
東京地方裁判所 1月30日。 中村修二氏の青色LED発明 (職務発明であると2002年9月に中間判決)の「相当の対価」 を約604億円と認定し、請求通り日亜化学に200億円の支払いを命じる判決。 うっひゃー満額回答。私の研究室で沸き起こる驚きと歓喜の声。これで技術者の 地位も... としみじみとした発言も。 もっとも、中村氏側としては、とりあえず200億円、という感じです。 判決直後は、大騒ぎになりましたが、青色LED発明のようなノーベル賞級の発明 なんて、そうめったらあるわけでないので、特異ケースと解されて、今は沈静化して います (日亜化学はたいへんでしょうが)。 さて、日本の職務発明制度の問題点を、簡単に解説しておきましょう。 職務発明制度は特許法35条( http://www.houko.com/00/01/S34/121.HTM#035 )に 定められています。企業は従業員の職務発明を使えますが、その代わりに従業員は 「相当の対価」(3項)を得ることができます。「相当の対価」は「その発明により 使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した 程度を考慮して定めなければならない」(4項)とされています。 これだけです。これだけだから、問題なのです。「相当の対価」について具体的な 規定がなく、あいまいなのです。これは、有能な従業員にとってのみ損というわけ ではありません。企業は、いつ従業員が裁判ふっかけてくるかもしれないという リスクを負う(対価請求権が有効な期間については、民法167条 http://www.houko.com/00/01/M29/089.HTM#167 より10年間とする判例あり)ことに なります。 それでは、他国ではどうなのでしょうか。 まず、アメリカ合衆国。職務発明制度はありません。だから、個々に労使契約で すべて決めます。無骨ですが、うまくいっているようです。 日本でも対価を労使契約で決めることができますが、労使間の立場の違いで、双方 が納得してちゃんとした契約が結ばれることは稀です(職務発明制度という従業員 にとっての保護網があることが逆効果になっているのでしょうか)。 次に、ドイツ。職務発明制度は存在し、従業員に支払われる対価は事細かに決めら れています。しかし、細かすぎて企業にとって負担になっています。 従業員にとっても、企業にとっても不満のない特許制度を実現することは、国家の 産業興隆にとって重要な課題です。個々の事例だけでなく、国家の産業興隆を視点に いれ議論する必要があります。 関連: 青色LED訴訟地裁判決の批判の仕方 http://d.hatena.ne.jp/hakuriku/20040201#p1 パテントサロン トピック「青色LED」紛争 http://www.patentsalon.com/topics/blueled/ バーチャルネット法律娘 真紀奈17歳(過去ログ)田中さんと日立と職務発明制度 http://homepage3.nifty.com/machina/d0211c.html#02113003