良いストーリーの蓄積・共有の例としての「自助論」

良いストーリーの蓄積・共有の例として、Samuel Smiles=著「自助論」がある。

Samuel Smiles=著, 竹内 均=訳 : 自助論 (三笠書房 知的生きかた文庫, 2002) p.295. 訳者 竹内 均 氏 の解説より。

 この本では、これでもかこれでもかといった具合に多くの人物の例をあげて、このへんのところが詳しく論じられている。これだけの例をよくも集めたものだと、スマイルズの根気強さにあきれるほどである。しかしその点がまさにこの本の魅力であり、この本が世界十数カ国語に訳されたベストセラーとなったゆえんでもある。明治の青年たちがこの本を読んで奮い立ったのも無理はない。

補足:
私は、「力ある正義」という記事の中において、「市民が〈力ある正義〉を作る」ために必要なものとして「リスクに関する良いストーリーの蓄積・共有」を挙げた。

芸術の予言能力

小林 啓倫 : 今こそ読みたいマクルーハン 電子書籍版 (株式会社マイナビ, 2013) 位置No. 1726/2576.

一世代あるいはそれ以上も早く、未来の社会的および技術的発展を予測する力が芸術にあることは、昔から認められていた。

小林 啓倫 : 今こそ読みたいマクルーハン 電子書籍版 (株式会社マイナビ, 2013) 位置No. 1728/2576.

レーダーとしての芸術はいわば「早期警報装置」であり、そのおかげで余裕をもって社会的および心理的ターゲットを発見し、それに対処する準備ができるのである。このように、芸術を予言能力のあるものとする考えは、芸術を単なる自己表現であるとする一般の考えと対照的である。

文学の表現力

神永 正博, 小飼 弾 : 未来予測を嗤え! (角川oneテーマ21 Kindle版, 2014 〈底本は角川oneテーマ21(2014)〉) 位置No. 284/1862.

{神永氏} 文学なんて必要ないという人もいますが、とんでもない話です。統計データだけで理解できるほど、世の中は単純ではありません。

───ストーリーがないと、普通の人がどうなのかなんてわからないと。

大塚 英志 : 社会をつくれなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門 (角川EPUB選書 Kindle 版, 2014 〈底本は角川EPUB選書(2014)〉) 位置No. 1091/3355.

柳田にとってやっぱり「公共の文学」、「自然主義運動」という、人々が自分たちの問題について「記録」し、そして共同して一つの枠組みをつくっていくことばの技術はなにより、ちゃんと選挙で投票を自分で考えてできる有権者をつくるのに必要なのだ、と考えます。そして柳田は「選挙民」つまり有権者育成の手段として民俗学を考えます。

大塚 英志 : 社会をつくれなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門 (角川EPUB選書 Kindle 版, 2014 〈底本は角川EPUB選書(2014)〉) 位置No. 664/3355.

自然主義、というのは文字通り、自然科学的な方法や見解に基づく文学のあり方を意味します。そもそも十九世紀の文学というのはダーウィンの進化論の登場で、人間も一つの生物に過ぎないんだよ、という考え方が成立したことが始まりです。だから植物学者が植物を解剖学者が死体を観察し、記録するように文学も書かれるべきだ、という考え方が出来上がります。エミール・ゾラの『実験小説論』です。