解釈: 複雑性という指標――今日の闘争における鍵

セブロウスキーが掲げ、大熊 康之氏が記した『米軍の「兵力の構築及び運用」のあり方に関する新しい評価尺度』を、自分なりに解釈した:


(1) 選択肢の創造と維持

《選択肢》、すなわち《その企図をくじくにあたり、〈全てを満足させることが難しい、多数の制限事項〉あるいは〈総合するとリスクが極めて高い、多数のリスク事項〉が存在する一連・一体の策》は、様々に得意な分野をもつ人々が、互いにつながり、情勢認識を共有すること(:特定の所属員に有利な、隙が多い策を良い策としないこと)から創出される。

創出され、維持された、豊富な《選択肢》を適策適時に発動することで、敵に《複雑性》(:〈全てを満足させることが難しい、多数の制限事項〉あるいは〈総合するとリスクが極めて高い、多数のリスク事項〉が存在する状況の性質。個々の事項は、動的であったり、相互に関係していたりする。 *)の網を絡め、敵を行動不能に陥らせることができる。

 * よって、今日の闘争環境のような、変化が加速し、曖昧性に支配された状況・環境は、《複雑性》を多くもっている。

(2) 高度の「業務処理及び学習」速度の構築

《複雑性》をもつ闘争環境に対応するために持つべき能力は、処理速度の速さである。処理速度が速ければ、自組織内の相互作用を多く発生できる(多くの人の得意な行動の発揮、アイデアやチェックを得られる)。これは、同時に自組織に学習をもたらす。

(3) 大規模・圧倒的な複雑性の構築

《複雑性》は、社会・政治の領域において高い。

ある兵力に勝利するにあたり《複雑性》が存在する兵力は、強い。

《複雑性》が豊富な環境を、我が意図のもとに使用するには、柔軟性=柔軟な適応性=高速な学習能力と、《選択肢》を圧倒的に〈創出・維持し、適時に発動する〉という積極性が必要である。


すなわち、

今日の闘争は、《複雑性》が豊富な環境において、《選択肢》(:その企図をくじくにあたり、《複雑性》が存在する一連・一体の策)が発動される状況である。

その中で生存し、我が意図を実現していくためには:

まず、

 a. 処理速度の速さ
 b. 様々に得意な分野をもつ人々が、互いにつながり、情勢認識を共有すること(:特定の所属員に有利な、隙が多い策を良い策としないこと)

が、能力として必要である。

そして、

 ・a. を、 組織的な高速な学習能力につなげ、柔軟性に結実させる
 ・b. を、《選択肢》を圧倒的に〈創出・維持し、適時に発動する〉という積極性に結実させる

必要がある。