若年層を観測する

〈若年層が老後に備えて貯蓄を増やしていく、その貯蓄を銀行などが投資する、これが経済発展の一要因である〉という考え方が一般的なのだけれど、近年は、若年層の消費額減少による経済停滞が問題視されるようだ。

若年層は、貯め且つ消費する役割を期待され、そしてそのように駆動されようとするのであるが、そうは叶わぬ。

なぜ「そうは叶わぬ」なのか。若年層が搾取されているから、という理由は間違いではないが、事の本質に戻れば、逆説的に〈搾取する側〉の老年層の貯蓄・消費によって、経済発展すれば良いのだ。しかし、全年代を総合しても、貯蓄率は著しく低下している(*)。そうは叶わぬのである。

ここまで考えて、少し視点を変えて、結論を導いた。すなわち、:

全年代総合の未来が、先んじて若年層の現在に表れているのだ。

なぜならば、若年層は、浮き沈みが激しい。これは、経験的・人脈的・物的・金銭的な蓄えが少ないことによる重みのなさ(軽妙さ)、創造性・積極性に富むことによる敏感さに、起因する。

この結論は、座して待つための知識ではなく、観測のための知識である。若年層の観測を評価手法として、問題の原因を解決し、美点の源を栄えさせ、全年代総合の発展を図ることができる。

註:
* 加藤 久和 : 人口経済学 (日経文庫, 2007) pp.134-135.

 わが国は過去において高い貯蓄率を誇っていた国として国際的にも有名でした。統計データの接続などの関係で直接は比較できないものの、国民経済計算における家計貯蓄率をみると、1975年度では23.1%、また1985年度では15.8%でしたが、2005年度では3.1%にまで低下しています(1975、1985年度は68SNA、2005年度は93SNAの基準によります)。

学ぶ対象としての歴史がもつ 3つの側面

学ぶ対象としての歴史には、3つの側面がある:

1. 帝王学として (問題解決の際に頼る知識として)
2. 有職故実として (正統性を求める際に頼る知識として)
3. 暗記術として

補足:
側面 1. が強調されることが、最も望ましい。

関連:
「歴史」を学ぶ小・中・高校生が知っておいたほうがよいこと

発展について

発展とは、エネルギーの有効な利用量の増加である。即ち、負のエントロピー供給量の増加である。

Jeremy Rifkin=著, 柴田 裕之=訳 : 水素エコノミー―エネルギー・ウェブの時代 (NHK出版, 2003) p.58.

ホワイトはこれらの要因を考えあわせ、「ひとり当たりの年間エネルギー利用量が増えるにつれて、あるいはエネルギーに仕事をさせる道具の効率が上がるにつれて、文化は発展する」と結論づけている〔9〕。

9 White, Leslie A. The Science of Culture: A Study of Man and Civilization. New York: Farrar, Straus, and Company, 1949. pp.368-369.

■ 生物個体や社会の本質

生物個体や社会の本質は、内部のエントロピーを低くする(、それと同時に外部のエントロピーを増大させる)ことである。

Jeremy Rifkin=著, 柴田 裕之=訳 : 水素エコノミー―エネルギー・ウェブの時代 (NHK出版, 2003) p.67.

生体は秩序ある存在として安定した状態を保っているが、そのために、利用可能なエネルギーを糧としており、環境の総体的なエントロピーを増やしている。「生体の形成に見られる少量のエントロピーの局所的な減少は、宇宙全体のエントロピーのはるかに大きな増加と抱き合わせになっている」とブラムは言う〔19〕。

19 Blum, Harold F. Time’s Arrow and Evolution. Princeton, NJ: Princeton University Press, 1968. p.94. (ハロルド・ブラム著「自然の進化」みすず書房)

エネルギーの有効な利用量が、エントロピーを低くできる影響範囲を決める。利用量が少なければ、生物個体自身しかエントロピーを低くし続けられないが、利用量が多くなるほど、より広い範囲のエントロピーを低くし続けられる。

■ エネルギーと情報

(エネルギーの視点で捉えると、)情報は、低エントロピーなエネルギーを利用する〈方法=技術〉と〈権利=金銭〉である。

技術は、情報によって表現され、保存される。技術進歩の内容は、

  • エネルギーの新たな利用法 (新たな《エネルギーを利用した結果生じるもの》)
  • より多くのエネルギーの利用法
  • エネルギー効率の上昇

である。

なお、情報を保持する媒体のエントロピーは低い。紙・DVD・LSI などは、エネルギーを利用して、低エントロピーに生産される。脳や神経は、エネルギーを利用して、低エントロピーに保たれている。情報をもつ社会は、エネルギーを利用して、低エントロピーに保たれ、また、情報の送受信には、エネルギーが必要である。

■ 経済

経済は、エネルギーと情報の用水路である

《〈自然の恵み〉と〈それを変換した財・サービス〉》(低エントロピーなエネルギー)と、それらを利用するための情報を、行き渡らせる。

Jeremy Rifkin=著, 柴田 裕之=訳 : 水素エコノミー―エネルギー・ウェブの時代 (NHK出版, 2003) pp.74-75.

経済活動とは、エントロピーの低いエネルギーを環境から借りて、価値のある製品やサービスに一時的に変えることにすぎない。その過程では、生産された物やサービスに込められるよりも多くのエネルギーが費やされて環境へと失われる。

経済成長は、以下から構成されている。

加藤 久和 : 人口経済学 (日経文庫, 2007) p.139.

経済成長率=技術進歩の上昇率+資本分配率×資本ストック増加率+労働分配率×就業者増加率

  註:「資本ストック」とは、生産活動に使用される設備のこと。 (参考 同書 p.131.)

技術は、情報である。資本ストックと就業者は、情報をもとにエネルギーの変換する装置である。

姫路のご当地アイドル「KRD24」からの発想

姫路のご当地アイドルプロジェクト「KRD24」からの発想:

個人の共通点がなくなった社会(平均が意味を持たない社会)において、(マス)メディアは、ごちゃ混ぜを提供するか、キュレータとして振る舞う。

個人の共通点が残っている社会(平均が意味を持つ社会)において、(ローカル)メディアは、平均を提供し、安心を提供する。

共通点がある個人の集合において、平均はその共通点を浮かび上がらせるため、平均を、対象像として設定することに意味はある。しかし、共通点がない個人の集合に対して、平均は無意味である。なぜならば、個人がもつ性質の度合いの多くは、正規分布ではなく、冪条則に従って分布するからである。

個人と《個人同士の相互作用》の総合としての社会は、中心局限定理により、意味のある平均をもつ。その社会の将来を予測することは可能かもしれない――ハリ・セルダンの心理歴史学のように。

しかし、個人の共通点がなくなった社会において、個人への訴求力をもたなくなったマスメディアに、社会の操作は不可能である。あるならば、社会を特定の将来へ誘導すべく、個人への訴求力をもったメディアそれぞれを操作しなければならない。