岸田 一隆「科学コミュニケーション-理科の〈考え方〉をひらく」

     

評価・状態: 得られるものが秀逸・多量な本★★★



購入: 2014/ 4/ 8
読了: 2014/ 4/27 [3]

日本サイエンスコミュニケーション協会誌. 第3巻1号, 2014, p.24. (目次)に、著者による「『科学コミュニケーション』の著者がすすめるサイエンスコミュニケーション関連本【基礎編】」という記事があるので、(複数冊読むことに比べれば劣るが)そこそこ信頼性のある本であると考える。

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この本からの引用、または非常に関連する記事

全 7 件

刺激等価性――「空気」の本質。感情移入と非論理をつなげるもの

記事ページ 発行: 2014年06月07日

山本 七平「「空気」の研究」中川 淳一郎「ウェブはバカと暇人のもの」では、問題行動として感情移入を捉えていた

感情移入(=共感)が非論理につながる機序(:メカニズム)に関して、岸田 一隆「科学コミュニケーション――理科の〈考え方〉をひらく」に記述がある。また、関係する、非論理を生む人間がもつ性質として"刺激等価性"が挙げられている:

岸田 一隆 : 科学コミュニケーション――理科の〈考え方〉をひらく (平凡社新書, 2011) pp.113-114.

 確率を苦手とするもう一つの理由は、先ほどから述べている、共感性の強さです。私たちは大事件や大事故や大災害の様子を報道などで目の当たりにします。すると、私たちはそれを自分の身の回りで起きたことのように共感してしまいます。...

 私たちには、確率的に起こりやすいことと起こりにくいことの区別が難しいのです。極端に言うと、どれも「同程度に起こりうる」ように思ってしまいます。確率は同じなのだから、被害が大きいリスクの方を恐れることになります。こうした心の働きは実に非論理的です。そして、それは人間の「刺激等価性」という心理現象と関係しています。

...

 人間以外の動物にはほとんど見られない人間特有の心理現象に「刺激等価性」というものがあります。「AならばB」という論理を学習すると、ほぼ自動的に「BならばA」という関係を結論するという現象です。


言い換えるならば、人間は頭の中に、「AならばB」ならば「BならばA」だと結論する、非論理的な思考回路(サブルーチン)をもっており、感情移入(=共感)の際には、その思考回路が何度も何度も使用される(そのサブルーチンが何度も何度もコールされる)。

「AならばB」ならば「BならばA」だと結論する誤りは、"ミクロな誤り"(要素の誤り)であり、それが使われて得られる、個別と一般の確率を同じだと認識してしまう誤りは、"マクロな誤り"(全体現象に表れた誤り)だと位置づけることができる。

以上から導かれる、肝に銘じるべきこと

・「AならばB」であっても、「BならばA」ではない。

・個別(確率が低い)と一般(確率が高い)を、切り分けて考えること。


 

知的生産物を構成する 3つの部分

記事ページ 発行: 2014年05月03日

岸田 一隆「科学コミュニケーション 理科の〈考え方〉をひらく」を読み、知的生産物は 以下の 3つの部分から構成されると考えた:

・情報本体

 知識、(知識までに至っていない)情報
 What.
 コンテンツ(メッセージ+コンテクスト)。

・情報利用手段

 媒体、利用の容易化(易読化{割付・図表}・標示)、利用手法
 How.
 コンテナ、メディア、メソッド。

井上 真琴 : 図書館に訊け (ちくま新書, 2004) p.70.

書誌学(本を研究する学問)では、書物は「内容が形態を規定」し、「書物の大きさは単にサイズの問題ではなく、その内容や用途によって決定されている」(「IV 比べて考える」『牧野富太郎蔵書の世界』高知県立牧野植物園、二〇〇二)とする。


・共有・共感の端子

 主題(関心項目・議題)の編集、表現(精度と確度の設定・心理・儀礼)
 Which, Who, Where, When.
 プロトコル、ファティック

 

3台の「紡績機」――知に関する社会の仕組み

記事ページ 発行: 2014年05月03日

「紡績機」は、ここでは、知に関する社会の仕組みを指す。

岸田 一隆「科学コミュニケーション 理科の〈考え方〉をひらく」を読む前からその存在を思考し、読んでいく中において思考の対象にしなければならないと確信したことに、〈第3の「紡績機」〉がある。

〈第1の「紡績機」〉〈第2の「紡績機」〉について、〈第3の「紡績機」〉との関わりを含めて説明した後に、〈第3の「紡績機」〉を説明する。なお、(A)(B)(C)(D)、(1)(2)(3)(4)は、〈第3の「紡績機」〉の説明と関連付けるための符号である。

● 第1の「紡績機」:

「(D) ON の市民」の一例である「知的ネット社会」の内部の仕組み。

即ち、
多数の人の知性・知能、および知的生産物を集め-束ね-構造化して、結論をつくる仕組み。

即ち、
論理・知識の発信者と受信者を結ぶ構造、及びそれを体系づけ・高度化する議論・討論の参加者(:討論者と視聴者)を結ぶ構造。


● 第2の「紡績機」:

社会の知性・知能を支える仕組み。

即ち、
安全と経済の副次的効果を、知的活動の基盤の要素として集め-束ね-構造化して、知的活動を栄えさせ、知的ネット社会の構築を進捗させる仕組み。

即ち、
安全・安心系統、衣食住・エネルギーの供給系統、公衆衛生・医療系統、産業、情報インフラ、学制、図書館制度、思想及び表現の自由を保障する系統など。

なお、第2の「紡績機」に関する最も大勢の主体は、

 (3) 日常及び日常の延長としての社会 [を構成する不特定多数の民] (OFF の市民)

であり、その中で、特段の注意 * を要する区分として、

 (4) 次世代

がある。

 * 次世代は、成長により、(A)(B)(C)いずれかの内部に入り込む(ことが標準的に実施されることが、現代社会で実現されている)。また、故に、再生産、及び時代を超えて伝わる物、伝わるということは重要である。


● そして、
第3の「紡績機」:

知性・知能を有する有し、それを意識的に発揮して行動する(2014/ 5/10修正)クラスタとして、

 (A) 産業界(企業)
 (B) 学術界
 (C) 統治機構(政/官)
 (D) ON の市民

があり、それぞれが

 (1) 自クラスタ内
 (2) 他のクラスタ
 (3) 日常及び日常の延長としての社会 (OFF の市民)
 (4) 次世代

に向けて、知識を発信し、駆動させている、という仕組み。 (初出 2013/ 4/ 6)

関連:
知的ネット社会の設計
http://takagi1.net/sekkei/index.html

2台の紡績機
http://nhm.blog75.fc2.com/blog-entry-544.html

 

科学ちゃん

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「科学と科学好きと社会を結ぶ」交通路“Intercity Science”開通

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有害物質に対して、社会はどうあるべきか

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