『「オバマ」のつくり方』を読んで――活動する強化された個人
記事ページ 発行: 2013年01月14日
ラハフ・ハーフーシュ=著, 杉浦 茂樹, 藤原 朝子=訳「「オバマ」のつくり方 怪物・ソーシャルメディアが世界を変える」の骨格となる構成は、オバマの選挙事務所によるネットの使い方の説明・解説であり、SNSの立ち上げ・民主党予備選挙・本選挙の段階や、各SNSについて、それぞれに4つほどの指針をあげて、解説しています。
しかし、重視すべきは、その解説のなかに描かれる、SNSによる情報伝達・組織化とオンラインツールによる個人の強化によって、理想・手本・議題が示された中で活動する、強化された個人(支持者)の様子です:
支持者には、オバマに関する(マスメディアの編集によらない)情報が伝えられただけではない。※
※なお、他陣営からオバマへ攻撃があった場合には、即座に、カウンター情報が支持者に伝達・共有された。
支持者は、オンラインでのトレーニングやオンラインツールによって、オバマの支持を広める能力を強化され、オフラインでも活動した。活動には評価が与えられ、ランキングがつくられ、共有された。このランキングが支持者の活動を促した。
強化され活動する支持者は、様々な活動を通して、(潜在的な)票や献金を集めた。活動する支持者個人個人は、オバマ個人では表現できない、人種・境遇・地域の多様性をそれぞれに具現し、有権者にオバマへの投票を納得させる力が強かったことだろう。
個別の議題についてオバマの政策に反を表明する、支持者のグループ(メンバーは 2万3千人)もあった。当該政策によって起こりうる市民の自由に対する行政の権力乱用が懸念された。オバマは、明確な声明を発表し、オンラインでこのグループ(のメンバー)と対話することで、「不満や抗議の表明」を「建設的な議論」に変えた。このグループは、当該議題に関しオバマが注意を傾ける優先順位を高め、行政の権力乱用を防ぐ措置を手厚くする旨を大統領候補たるオバマにコミットさせた。
支持者SNSは、選挙後、「重要なアジェンダ[:議題]について立法化を促すパワフルな草の根組織」をめざして改められた。
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