ヒトの意識には、正のバルク・エントロピー指向性がある

先週、阪急電鉄神戸線で、同社の8000系車両 8000Fに乗りました。

加減速の際に、制御に用いられている GTO-VVVFインバータ 由来の磁励音(磁歪音)が響きわたります。

8000系の第1編成である8000Fの登場は、1989年。以降の新型車両にも、VVVFインバータは搭載されていますが、音はだんだんと小さくなっています。

そのことについて、1年前に
  技術が無臭になっていく
という記事を書きました。

今回、車内で、磁励音が、私がパワーエレクトロニクス(強電制御)に興味を持つきっかけであったことを、思い出しました。

インターネット上には、VVVF制御に関する膨大な知識があります。しかし、磁励音が聞こえなくなった時、それにアクセスしようとする人は、激減するでしょう。

磁励音は、全く無駄なものです。しかし、ヒトは、無駄なものを認識します。逆に、全く無駄がないものを、ヒトは認識しないのでは、ないでしょうか。

ヒトの意識には、不可能・不快・無駄に向かう指向性がある、と言えます。

不可能・不快・無駄は、見かけのエントロピー(バルク・エントロピー、と呼びましょう)が大きい状態です。

ヒトの意識には、正のバルク・エントロピー指向性があるのです。

この指向性が、ヒトが知能を持ち、人類が高度に知的である原因の一つでしょう。

「ミネルヴァの梟」との出会い

「ミネルヴァの梟は、黄昏の到来とともにのみ、その翼を拡げる」あるいは「ミネルヴァの梟は、夕暮れに飛び立つ」。(ゲオルク・ヘーゲル, Georg Wilhelm Friedrich Hegel、1770-1831)

私が、はじめてミネルヴァの梟のことを聞いたのは、2004年10月12日に、京都大学百周年時計台記念館(百周年記念ホール)にて行われた、京都大学 春秋講義「エーゲ海の流れ星――気象学の歴史を考える――」(講師: 京都大学理学研究科名誉教授 廣田 勇 氏)の場であった。当時のノートに「アテナ=ミネルバ」とメモしている。なお、同氏は、当時、日本気象学会の理事長であった。

私は、当時、大学4回生で、気象に関連する研究をはじめたばかりであった。

その後、同氏の著作「気象解析学―観測データの表現論」を読んで、「ミネルヴァの梟」について知った。

同書の8章(最終章)は、章題が「ミネルヴァの梟 あるいは現象論の復権について」である。章の冒頭に、「ミネルヴァの梟」が解説され、著者のご親族であろうか、廣田 和子 氏 作の「ふくろう」(1993)という木版画が挿れられている。

アプローチとしての汎用品の商品開発

汎用品の商品開発には2つの果実がある。

上記の文について私の思いを正確に伝えるために表現を改めると、以下の2つの果実を得る手段(アプローチ)として、汎用品の商品開発があるのである。

ひとつは、高度な者に(安価な)手段を与えることである。即ち、CAN。

そのためには、商品の原価低減は必須である。原価低減をさらに一段と実現する(不可能だと思えるような原価低減を実現する)ためには、商品が量産されなければならない。そのためにはそれが一般な者にも購入されなければならない。一般な者は、高度な機能を必要としないから、一般な者に対する宣伝は上手になされなければならない。

もうひとつは、一般な者を変化させることである。即ち、CHANGE。

一般な者は商品の高度な機能を使いこなせないが、商品から新たな環境を取得する(新たな環境に没入する)。それは、商品の新たな使用環境(小型軽量商品の屋外・移動中の使用など)、新たな使用感(複数機能の同時使用、新たなインターフェイス、新たなアーキテクチャ((使用制約)) )、新たに提供される体験(商品を通じて、商品の機能を活かして提供される、作られた体験)である。これらが、商品を使用する一般な者を変化させる。

ここで、振り返ると、重要なことは、商品の原価低減、一般な者に対する宣伝、一般な者への新たな環境の提供である。