再生可能エネルギーに関する皮算用

2030年における電力に占める再生可能エネルギー依存率の目標は、およそ30%である。

水力が2010年時点で 7.8%、バイオマスが2020年目標で 約5%、風力が2030年目標で 約5%である。

2030年時点でのバイオマスを約10%と仮定して、残りは約5%である(水力に伸び代はないと仮定した)。

バイオマス、消費電力の5%に拡大 再生エネの柱に
2012/8/16 14:00 日本経済新聞 電子版

政府が月内にまとめるバイオマス(生物資源)事業化戦略の原案が16日、明らかになった。現時点で0.3%程度にすぎない日本の全世帯の消費電力量に占めるバイオマス発電の割合を、2020年までに約5%に高める目標を掲げる。

風力促進へ送電網整備、官民で3000億円基金 北海道・東北重点
2012/8/22 2:01日本経済新聞 電子版

政府は原発依存度を2030年時点で0~25%とする3案のエネルギー政策の選択肢をまとめている。脱原発、原発維持のいずれを選んだ場合でも、再生エネは10年度実績の2倍以上となる25~35%まで引き上げる必要がある。再生エネの中では発電コストが比較的安い風力は30年までに5%程度を目指す。

「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する意見

パブリックコメントに、以下を投稿しました:

要約:
15シナリオを支持する。但し、資源購入時の価格交渉力を上げ、またリスクを避けるため、比率の合計が100%を超えるようにすべきである。火力の効率を向上し、エネルギーに関わる事業者を増やすべきである。


目的は、国民・事業者が安いエネルギーを制約なく安定的に手に入れられる状態の実現である。電力は、利便が高いエネルギーの形態の一つである。

・提示されているシナリオからは、15シナリオ(原子力比率 15%)を支持する。

原子力発電所の新設に関し、住民の賛成を得、それを公式な形式に構築するコストが増大したため、原子力発電所の新設を凍結すべ きである。また耐用年数に達した炉は廃炉すべきである。原発新設に関し支払われることになっていた政治的・行政的なコストは、 他の課題の解決に充てるべきである。

・ただし、電力源の比率の合計が100%超えになるようにすべきである。

これには、以下の2つの目的がある:

(1) 海外からのエネルギー資源購入に際する価格交渉力を向上させるため。

エネルギー資源購入による総額 17兆円(2010年、化石燃料輸入額)にのぼる富の海外流出を減らさねばならない。

(2) 再生可能エネルギーの普及速度に関する不確かさを補うため。

例えば15シナリオでは、再生可能エネルギーが総電力の30%を担うとされている。しかし、水力を除いた比率を2010年に比べて約10倍 にしなければならず、これには大きな困難が伴う。また、再生可能エネルギーは分散電源であり、計画を管理しにくい。したがって 、計画実現には大きな不確かさが伴う。

電力は、一日も欠かさず、その供給量が需要量と合致していなければならない。電力に窮し、あるいは質が悪い電力しか手にするこ とができず、それが国民の生活や事業者の事業を制限する事態になってはならない。そのような事態は、経済的に計られる国際競争 力を奪うのみならず、国民・政府の、エネルギー戦略に関する発想力や新しい施策の実行力、さらには内政・外交における判断力を 奪うような事態を招き得る。

再生可能エネルギーの普及が計画どおりにいかない場合に備え、電力源の比率の合計が100%を超えるようにすべきである。

・火力発電においては、再生可能エネルギーの普及が計画どおりにいかない場合においても、不足分を補うことができ、かつ炭酸ガ ス排出量を削減するため、効率向上を早急に進ませるべきである。

確実な電力源である火力発電所の効率向上を振興すべきである。化石燃料はシェールガス革命によって可採年数が大幅に増えた。ま た日本近海には多くのメタンハイドレートがある。化石燃料の大量使用にあたっては炭酸ガス排出量の削減が求められる。在来火力 を効率が高い天然ガスコンバインド発電や石炭IGCC発電に置き換えることで排出量の抑制が可能である。

原子力発電所が徐々に耐用年数を達し廃炉されていく中、再生可能エネルギーの普及が計画どおりにいかない場合に備え、この置き 換えを早急に進める必要がある。そのために置き換えにかかる手続きを簡素化するなど行政が配慮すべきである。

また、火力発電所をフル稼働させている状態では置き換え工事の進捗速度が上がらないだろう。火力発電所を長期停止し置き換え工 事ができるように、原子力発電所の再稼働を早期に認めるべきである。

・時間変動が大きい再生可能エネルギーを活かすため、電力系統、蓄電設備の強化を実施すべきである。

時間変動が大きい再生可能エネルギーを大幅に採用する上で課題になるのは、電力の安定供給である。2010年12月に三重県四日市で 起こった瞬間停電による損害は記憶に新しい。

電力の安定供給のために、送電系統と蓄電設備の強化が必要である。蓄電設備としては、従来の揚水発電所に加え、水素を媒介にしたエネルギー貯蔵も考えうる。これならば、貯蔵してさらに余剰になった水素を、都市ガスに混ぜたり、燃料電池車の燃料として使用できる。

・エネルギーに関わる事業者を増やすべきである。

再生可能エネルギー発電や家庭用燃料電池など、エネルギーに関わる事業者を増やす政策を実施すべきである。

新しいことを迅速に実行するには人手がかかるため、事業者の数を増やす必要がある。また、前述したように、電力は、一日も欠か さず、その供給量が需要量と合致していなければならない。我が国が解決しなければならないエネルギーに関する課題に手本がない 以上、ある策が失敗しても、すぐに代替策を採れる状態にしておく必要がある。そのためにも、事業者の数が多い方がよい。

水素社会を加速させる要素

私が考えるに、

 水素社会黎明期: 石油精製・製鉄プロセスなどからの副生水素の有効活用(マネタライズ)。

 水素社会普及期: 自然エネルギー(再生可能エネルギー)発電量の時間変動を吸収する手段としての水素流通。

 水素社会完成期: 化石燃料の大量使用の停止。ガソリン自動車の生産中止、還元剤として水素の使用(水素還元製鉄など)、など。

エネルギー問題への貢献と経済・政治、そして知

エネルギー問題への貢献は、日本から富の流出を防ぎ、また 日本政治に(少なくとも最低限の)安定をもたらす。

これは、日本人の発想力を高め、また 日本の統治機構における意思決定に関し(少なくとも最低限の)質を担保させる。

そして、これらによって、日本が、適切な解答を導き出す能力が保たれ、さらには高まる。

関連:
エネルギーに関する数字

高エネルギー消費は、これまでずっと、つねに政治力の前提条件であった

「善」と適切な解答を導き出す仕組み

高エネルギー消費は、これまでずっと、つねに政治力の前提条件であった

ダニエル・ヤーギン=著, 伏見 威蕃=訳 : 探求――エネルギーの世紀(上) (日本経済新聞出版社, 2012) p.10.

[ハイマン・リックオーバー提督(ハイマン・G・リッコーヴァー, Hyman George Rickover)は、]ひとつの戦略的コンテクストにまとめている。「高エネルギー消費は、これまでずっと、つねに政治力の前提条件であった」

発電電力量の単位換算

金融日記:日本のエネルギー・フローの全体像を理解する内のエネルギー・フロー図 (出所を「エネルギー白書2010」としているが、私には見つけられず) によると、

2008年度の電力量は 3471*10^15 J である。

億kWh/year 単位に変換すると、

 3471*10^15 J/year = 3471*10^15J/year ×( 1/(3.6*10^14) 億kWh/J ) = 9,641.7 億kWh/year

である。これは、電気事業連合会 2008年度の発受電速報にある、発受電電力量(実績、10社計) 9,718.7億kWh/year に、よく合う。

2008年度の電力量 3471*10^15 J を万kW 単位に変換すると、

 3471*10^15 J/year = 3471*10^15 J/year ×( 1/(366*24*3600*1e3*1e4) (year/s)(万k/1) ) = 10,976 万kJ/s = 10,976 万 kW

である。これは、平成20年度 エネルギーに関する年次報告書(エネルギー白書) p.127 第 214-1-6 発電電力量の推移(一般電気事業用)に、よく合う。

エネルギーに関する数字

財務省貿易統計 平成23年分貿易統計(確定)によると、

鉱物性燃料輸入額は、年間 21,816,150百万円=21.8兆円 である。

エネルギーの消費量(エネルギー量基準)は、金融日記:日本のエネルギー・フローの全体像を理解するによると、

2008年度において

 民生 33.8%
 運輸 23.6%
 産業 42.6%

である。