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「流体の粘性係数の測定」レポートWeb版

 1)実験目的

 

  本実験は、ハーゲンーポアズイユ(Hagen-Poiseuille)の法則を用い、水の粘性係数を測定することを目的とする。

 

 2)実験の原理

 

  太さが一様な細い、水平な管内の流体が層流の状態であるとき、半径 r r+dr の円筒層に作用する力のつりあいは次のように表される。

        F-(F+dF)+(Δp)・2πr・dr = 0   (F :粘性力 Δp :管の両端の圧力差)   ……[ 1]

また、時間 t の間にこの管を通過する流体の体積 V は、

    <ハーゲンーポアズイユの関係>

        Vap)t/(8ηl ) (a :管の内半径 l :管の長さ η :粘性係数)    ……[ 2]

で表される。

  本実験では、傾斜したガラス管を用いるので、水平に対するガラス管の傾きをφとすると、半径 r r+dr の円筒層に作用する力のつりあいは、[ 1]式に代わり次のように表される。

        F-(F+dF)+(Δp)・2πr+(2πrl ・dr)・ρg ・sinφ = 0   (g:重力加速度 ρ:流体の密度)

即ち、   F-(F+dF)+{(Δp)+ρgl・sinφ}2πr=0   であり、水平な管での関係における

Δpp)+ρgl ・sinφに置き換えることになる(*)。

  しかし、以上は圧力差が一定で、流速が一定な場合についてのみ成立する。本実験では圧力差、流速が変化する。いま、任意の時刻の管の入口に直接つながる容器内(以下ただ「容器」とのみ記す)の液面(以下ただ「液面」とのみ記す)に注目し、上水面と容器の底面(:管の入口)の間にベルヌーイの定理を用いる。液面の降下速度は管内の流速vに比べ小さいので無視すると、

  h´ρg+pv/2+ρgh+p (p:大気圧 h´:液面の高さ h:管の入口の高さ p:管の入口での圧力)となり、

 Δp=p-p=ρg(h´-h)-ρv/2  となる。

  近似として、h´を平均水位[:(h+h)/2 h:滴下起点での液面高さ h:滴下終点での液面高さ]、vを平均流速[:V/(πat)]として、

        p)+ρgl・sinφ=(ρ/2){(h+h-2h)g-v} (h:管の出口の高さ) ……[ 3]

となる。よって、[ 3]式と(*)により、[ 2]式を用いて、

 

……[ 4]

 

となる。

  本実験では、hhhltVをもとめ[ 4]式を用いて粘性係数ηをもとめる。

 

 3)実験装置・用具

 

  本実験では下の装置・用具を用いた

[ A]円柱状ガラス容器(約50 mm 液体の水位を調節するために、ゴム管、ピンチコックをつける)

[ B]ビーカー

[CD]毛細管 (No.44 15.7 ゚Cで、l 2.313 cm、M 1.0196 g)

[ E]ビーカー(500〜1000 mm)

その他  ・ゴム管 ・漏斗 ・上皿天秤 ・垂直尺 ・物差し ・温度計 ・トースカン ・ストップウォッチ(松下 TF83(F) B )


また、これらの装置を以下のように配置した。

1:装置配置図  (略)

 

 4)実験方法

 

< 1>試料となる水を水道の蛇口からしばらく流し放した後、ビーカーEにとり、しばらく放置し、室温に近い温度になるようにした。

< 2>毛細管の全長を物差しで3回図り、平均値lを求め、これを容器Aの下の口のゴム管にはめた。

< 3>(a)ガラス管の先端Dに長いゴム管をはめ、その先に漏斗をつけて、静かに水を注ぎ、水面が標線Hよりやや高くなる程度でコックを閉じた。

    (b)長いゴム管と漏斗を取り除き、ガラス管の先端DにビーカーB上になるよう取り付けた。コックを調節して水面を標線Hに一致させた。

    (c)ビーカーB内の水を捨て、内壁をハンカチでよく拭いた。

(d)もう一度ガラス管の先端DにビーカーB上になるよう取り付けた。

< 4>(a)ストップウォッチを読み、Tとし、記録した。

    (b)コックを放し、同時にストップウォッチをスタートさせた。

< 5>(a)A内の水面が標線Hまで下がった瞬間にコックを閉じ、同時にストップウォッチをとめ、目盛を読み、Tとし記録した。また、同時にビーカーB内の流下した水の温度θを測り記録した。

    (b)上皿天秤でビーカーBの質量を同中の流下水を含めて測り、Bとした。

    (c)標線Hの高さh、標線Hの高さh、ガラス管の下端Dの高さhを垂直尺、トースカンを用いて測った。

< 6>< 3>から< 5>の操作、測定、記録を4回繰り返した。

< 7>よく水滴を拭いた空のビーカーBの質量を測定し、Bとした。

 

 5)測定データ

 

  毛細管の内径半径aは 1.006×10−3 mである。

  また、毛細管の長さlは、計測した値が 41.00 cm, 41.03 cm, 41.18 cmであったので、平均値をとって、l=41.07 cmである。

  その他、測定されたデーターは、表 1のとおりである。これらの数値を次式に代入して得た値を表 2に記す。

t=T-T

V=(B-B)/ρ

  [但し ρ=9.9691×10 kg/m(25.5 ゚C), 9.9694×10 kg/m(25.4 ゚C)<25 ゚Cにおける流体(水)の密度 0.99704 g/cm26 ゚Cにおけるそれ 0.99678 g/cm から内挿した値>]

 

1:測定データ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

滴下開始

滴下終了

滴下された水と

水温

h0

h1

h2

 

 

時刻T1 (s)

時刻T2 (s)

ビーカーの質量B2 (g)

θ (℃)

(cm)

(cm)

(cm)

1

回目

15.2

60.1

84.15

25.5

9.4

24.6

21.5

2

 

10.0

52.7

84.75

25.4

9.4

24.6

21.5

3

 

10.0

55.9

86.40

25.5

9.4

24.6

21.5

4

 

10.1

57.0

87.00

25.5

9.4

24.6

21.5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ビーカーの質量B1

33.25

g

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2:中間計算結果

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水温

滴下所要

滴下した水の体積

平均水面の

 

 

 

 

θ (℃)

時間t (s)

V (cm3)

相対的高さh (cm)

 

1

回目

25.5

44.9

51.06

 

13.7

 

 

2

 

25.4

42.7

51.66

 

13.7

 

 

3

 

25.5

45.9

53.31

 

13.7

 

 

4

 

25.5

46.9

53.92

 

13.7

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 6)解析及び結論

 

  各回における平均流速vと、粘性係数ηを次式に数値を当てはめ、求める。

 

   

 

計算結果は表 3に記す。なお、本表をもって本実験の結論とする。

 

3:計算結果

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平均流速v (m/s)

粘性係数η (kg・m-1・s-1)

水温θ (℃)

 

 

1

回目

 

0.357

1.10

×10-3

 

25.5

 

2

 

 

0.380

1.02

×10-3

 

25.4

 

3

 

 

0.365

1.07

×10-3

 

25.5

 

4

 

 

0.361

1.08

×10-3

 

25.5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 7)検討と考察

 

  以上の粘性係数の計算は、水の流れが層流のときのみに限られる。レイノルズ数を各回について求め、その値Reが 2×10 を越えないならば、層流であるとする。表 4に各回におけるレイノルズ数の値と層流であったかの判定結果を記す。

 

4:層流であったかの判定

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイノルズ数Re

 

判定

 

 

1

回目

0.654

×10-3

層流

 

 

2

 

0.746

×10-3

層流

 

 

3

 

0.684

×10-3

層流

 

 

4

 

0.670

×10-3

層流

 

 

 

 

 

 

 

  表 4から分かるように、全回について「層流であった」ことが確認された。

 

  実験過程及び測定操作において不適切であった点は、

( a)1回目の測定の際、滴下開始後、ピンチコックを完全にゆるめたもののをゴム管からはずさなかったこと、

( b)教科書p.40 l. 6~ 7[§方法 ( 6)]には、「……h,h,hをトースカンと垂直尺を用いて測り (2回測って平均する) ,……」となっていたが、報告人と共同実験者は1回しか測らなかったこと(重大なミスとの指摘アリ)

( c)上皿天秤の分銅が一部かけており、やむなく他のテーブルの物を借りて使ったこと

( d)流下水の水温測定前にビーカーBを手でもって運んだこと

がある。


  本実験の結果について、相対誤差を求め、表 5に記す。        表 5:相対誤差

なお、真値は η=0.882 kg・m−1s−1(25.4 ゚C),

 

 

相対誤差

 

 

 0.880 kg・m−1s−1(25.5 ゚C)  である。

 

 

 

 

1回目

2

3

4

 25.0 %

 15.6

 21.6

 22.7

 

 

 

 

 

 

  また、有効数字は、thの値の有効数字が3桁であることに起因し、3桁である。

  以上により、本実験の妥当性は相対誤差が平均で約20%となったため、「かなり問題がある」と報告人は考える。

  ここで、誤差の要因について記す。誤差の要因は「実験過程及び測定操作において不適切であった点」(以下項目Aと称す)以外に、まず流下水の蒸発があるがこれは極めて微細である。しかし、重大なのは項目A( d)に関連して、<分銅の質量が正しいのかどうか>ということである。

後略……定量的な考察をせよとの指摘アリ

<以 上>


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